第5章 魔法使い
ある日の屋上にて
「美奈子ちゃんは俺的にワンピースかな~!」
次から次にカチンと苛立つ感情は芽生えるもので。
「確かに……強いて言えば柔らかいピンクの愛らしいワンピース似合いますね。彼女なら」
彼女には化粧気も必要無い素顔が一番そのままに自然で、身に纏うそれらが例え如何なる物であっても素肌が一番美しい。
「庶民は庶民らしくデニムとか普通に似合うだろ?短めの」
「……それは聖司の趣味?」
そうだと分かっていても。
分かっているがこうも話題に出されては沸々と煮える感情は何なのか。
「美奈子、一つ聞くけどピンクのワンピースとデニムのスカートは好き?」
「え?うん。好きだよ、どうし……」
「花椿ーー!」
「ん、なになに?」
自分が一番に彼女を良く知っているのだ、それをああだこうだと全く同じ意見を彼等に先を越されて言われる。
これには絶対に負けるつもりは毛頭無い。
「花椿、こいつに今すぐ誰の意見とも被らない私服を用意してほしい。」
「どうしたの琉夏くん」
彼女を見立てるのは自分だけだ。
あれこれ思いを馳せるのも自分だけに許された権利なのだから。
「……うーん。ならば何がいいかな。何だろ、モコモコ?それともモフモフ?」
「ええっと、ニットの事?ファーの事?」
「はは~ん、なるほどね♪
私の方で何か用意しておくから、明日一緒に家においで。」
「マジか、じゃあ任せた、花椿」
「はいはい」
「あの、琉夏ちゃん。普段着位なら私、自分で決めるけど…」
それでも実際は
用命を受けた魔法使いの見立てが誰よりも彼女に似合ったコーディネートを揃えてくるという事。
肝心なその点に気付かない琉夏王子は、今日もあれこれとお姫様の一番であろうと奔走を繰り返すのだ。