第5章 魔法使い
「悪いけど。こいつは俺のなの。じゃあ」
「琉夏ちゃ…っ…?!」
そして美奈子を独り占めしたいという、自分自身の独占欲にもだ。
美奈子の腰をグイッと引き寄せると、琉夏は『来て』とだけ言って手を引き、大広間をどんどんと横切って行く。
強引に腕を引かれ、背の高い彼の大きな歩幅に後を追う美奈子は足元をもたつかせながら歩き、突然な琉夏の行動に何の事やらだ。
「る…琉夏ちゃん!一体どうしたの?いきなり……」
戸惑う美奈子の手を引きながらお構い無しな琉夏
広間にきていたカレンが声をかける
「あれ?琉夏くん帰るの?」
「うん。連れて帰るから、みんなに伝えて。あと琥一に今日は絶対に帰って来るなって」
「え?わ、わかった笑」
「あと、色々ありがとうな。花椿」
「ふふっ、気にしないで(o^^o)」
「行くぞ、美奈子」
「え?琉夏ちゃん、だってパーティーは……
ご飯楽しみにしてなかった?」
「別にいい。……いいから行くよ」
「琉夏ちゃん!…もうっ」
事態を飲み込むのに多少の時間差を要するカレンの前を通り過ぎ、二人が廊下の奥へと消えて行く。
その後ろ姿を見送ったカレンが、そこで漸く事の成り行きを推測して『ああ!』と一人頷いた。
「どうやら思った通りになったかな…」
語尾に『♪』と音符を付けたように機嫌良くカレンが琥一たちの元へと向かう。
自分が予想したように、どうやら琉夏はまたしても嫉妬に駆られたようだ。
今夜の彼女を誰もが放って置く筈が無い、ましてあの先輩、後輩、兄、同級生なら尚更我先にと構って来る筈で。
そうとくればこうなるだろう。
まんまと琉夏は飛び切り美しく着飾った彼女との、久しぶりのフリータイムに出掛けて行った。
「これでバンビも琉夏くんと一緒に過ごせる訳で……いやぁ、良かった」
そんな魔法使いはいつだって琉夏と、琉夏の愛するお姫様の味方だ。
最近特に息つく暇も無く多忙な琉夏と、それ故に寂しい思いをしていたお姫様。
彼女に最高に美しくなる魔法を掛けたなら王子様の元へ。
飛び切り素敵な時間を――――……。