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ときめきメモリアルGS3 短編

第4章 小さな命


しかし、桃が生まれてから実は気になっていることがある



「うぇぇん!ふぇっ…」


外もとっぷりと闇に包まれた頃

眠たいのか、桃が泣き声を上げた



「あ、そろそろおねむかな?琉夏くん、
私 桃を寝かしつけて来るね」


「ん」


夕食の合間に席を立ち、また寝室へと籠ろうとする美奈子の背中に声をかける琉夏



「ここであげれば」


「えっ!?」

驚きと羞恥に、すぐ顔を赤くさせた美奈子


「えっと…あの…大丈夫だよ…」


「恥ずかしいの?
もっと恥ずかしことしてるのに?」


「っ!もう!琉夏くんはゆっくり食べてて!」


バンとドアを閉められ、
一人ぽつんと取り残される琉夏


((授乳してる姿を見られるのが、そんなに恥ずかしいのかな…))


琉夏がこんな小さな悩みを抱えているとは、仏すら思うまい


美奈子は、桃が生まれてこの方、授乳している姿を一回も見せてくれたことがない


男としては、やはり自分の妻が子供に授乳している姿を一度くらいは見てみたいもので…



((俺の悩みも段々贅沢になってきたかも…))



琉夏は、
自分がこんな幸せな悩みを持つようになったことを、高校生の自分では考えられなかったと思う。

ましてや”父親”になるだなんて、誰もが予想できなかっただろう

琉夏の側には美奈子がいて
桃がいて

大切な妻と子を守っていく


一本の芯が通ったような

初めて”生きている”と実感したような

言葉では言い表せない変化に、自分自身戸惑うこともまだある

たまに、これは全て夢で琉夏自身が、
もう死んでいるのではないかと疑うことも



琉夏は今でも実の両親が、
死んだ夢を見ることがある



美奈子は日を増すごとに母親の顔になっていくのに対し

果たして自分は父親の顔になっているのだろうかという不安さえ抱いてしまう琉夏



((やれやれ…俺もまだガキかも…))



すっかり冷めてしまった味噌汁を啜りながら、段々と小さくなっていく娘の声にじっと耳を澄ませたのだった。






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