第1章 初キス騒動
「…なにこれ」
その場に取り残された琉夏の呟きは誰に届くことも無く夕日に溶けて消えた。
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「っ…く…」
自宅に戻った美奈子は一人涙を拭いながら唇を噛み締めて居た。
大好きな琉夏と気持ちを通わせて、晴れて恋人同士になれたと言うのに、こうも悲しい気持ちになるとは思わず横たわっていた。
「…ため息まで…つかなくても良いのに…」
先程、いきなりキスされそうになり思わず拒んでしまった時の琉夏の言葉が耳に残っていた。
『…キスなんて、幼稚園生でも…。』
心の底から面倒くさいとでも言わんばかりの表情と溜息。
確かに、琉夏のあのルックスならば、女性経験が全くないとは露ほども思っては居なかったが、それでも自分の『初めて』を馬鹿にしたような言い草に心が深く傷付いた。
「…初めては好きな人とって…思うのは間違ってるの…?」
ずっとずっと、初めて口付けを交わすなら大好きな人と、と心に決めていたのだ。
長かった片思いが終わり、琉夏と気持ちを通わせる事ができて、初めての口付けは琉夏とするのだろうとは思っていた。
大好きな人と初めての口付け。
しかも相手はあの琉夏だ。
緊張しない訳もなく、それこそ心の準備も無しに突然されるともなれば、緊張してしまうのも無理は無かった。
「…(´・ω・`;)ハァ~~・」
しかし、いざ初めてだと知った途端にあんな面倒そうな態度を取られてしまえば、自分は一体何の為に恋人になったのかが分からなくなってしまう。
琉夏とは歳は同じでも異性の経験値からいえば雲泥の差も有るだろう。
しかし、だからこそ琉夏に身を任せ、優しく手を取り誘って欲しかった。
「琉夏ちゃんのばか…」
女心などまるで分かっていないような琉夏の言葉が酷く恨めしかった。
「……初めてじゃなくてもいいのかな…」
何だか自暴自棄にも似た気分になってきてしまう。
初めてを面倒だと思われてしまうなら、別の男性と一から十まで済ませて置けば琉夏は納得してくれるのだろうか。
「…そんなの…嫌に決まってる…」
しかし、どんなにヤケな気持ちになったとしても琉夏以外の男の人とキスを交わす事も、それ以上を済ますことも考えられなかった。