第3章 お仕置き
「やっ…やめて下さいっ…離して!」
精一杯の抵抗をするべく美奈子が身体をひねった途端。
「ぐあああ…!!!」
男の呻き声と共に身体の拘束がふっと解かれた。
足元には腕を抑えたまま地べたに転がって呻いている先ほどの男。
何が起こったのかわからずキョトンとしていると、聞きなれた声が頭上から落ちてきた。
「…ヒーロー参上!!
って帰りが遅いと思ったら、何やってんの」
直ぐにその声が大好きな恋人、琉夏だと気付き、助けに来てくれたのだと瞬時に理解した。
不安から開放された安心感から思わず涙ぐみ、すぐさま琉夏の腕に抱きとめて欲しくてパッと顔を上げた瞬間ニッコリと笑う琉夏が目に入った。
「………。」
その笑顔を見た瞬間、サーッと血の気が引くのがわかった。
(お、怒ってる…)
先ほどの甘い胸のトキメキは何処へやら、美奈子は先ほど男に絡まれた時以上に背筋が凍る思いがした。
「…良くもまあ、お前は変なのに絡まれるね。
しかも、簡単に身体まで許しちゃってさ」
「許したわけじゃ…ないもん。」
………
…………ーーーーー
高校卒業式の日
学校の教会で想いを伝えあった二人は晴れて恋人になった。
在学中、周りからは、両思いとわかるほど。
当人たちがなかなか前に進めずいたらしい。
学生時代から、何かと美奈子に近寄る男を片っ端から兄である琥一と潰してきた。
中には諦めてない先輩や後輩も複数いるが。
完璧な笑顔の琉夏に腕を捕まれて、よたよたと歩きながら家まで帰る。
こんなに恐ろしい琉夏の笑顔は久々かもしれない。
しかも、お土産に買ったケーキまで落としてしまった為、琉夏のご機嫌を伺う術は美奈子には無かった。
「俺以外の男にこの身体触らせたらどうなるか…わかってるよね」
お仕置きだね。
いつも通り、ゆるい口調の筈にも関わらず逃れられない強制力を孕んだ声にぐうの音も出なかった。