第13章 可愛いよ、×××…俺が欲しい?
―――8月。
キラキラ眩しい陽射しがさすなか
日傘を差し街路樹の枝々に緑が芽吹く様を恋しく思いながら、公園の入り口付近にあるパン屋へ。
「やぁ、美奈子ちゃん。丁度良かった!タルトタタン、クロワッサンが出来たばかりなんだ」
モダンで明るい硝子張りの店内に一歩足を踏み入れれば、地下のキッチンで作られた焼き立てのパンが店内に所狭しと並び、直ぐ様あれもこれもと目移りしてしまう。
鼻先を擽る芳ばしい香りと暖かな店内に、頬も一瞬で緩んだ。
「わぁ、ナイスタイミングでしたね!」
当然パンの味もさることながら、温厚な人柄の店の主人や、笑顔のチャーミングな女性店員とが醸し出す温かな雰囲気も気に入り、はばたき商店街で足繁く通う馴染みの店の一つとなっていた。
主人が「どうだい!」とトレイに乗せた出来立ての品を満足気に見せてくる。
それは大きな林檎が丸ごと入ったタルトタタン、バターがふんだんに使われているクロワッサンは、この店で一番の美奈子のお気に入いりだ。
「それじゃあタルトタタンを一つ、あとクロワッサン、クリームパンを一つづつ」
「毎度!」
魚介のマリネも注文しレジで会計序でに女性店員と軽く立ち話をする。
これがこの店での毎度お決まりな流れだった。
「美奈子ちゃん、今日はイケメン旦那様と一緒じゃないのかい?」
「だ、旦那様って//////」
「そんな顔赤くしちゃって可愛いね美奈子ちゃん」
琉夏と美奈子は美男美女のため、はばたき商店街でも二人が高校生の頃から「いつ付き合うのか」、付き合ったら付き合ったで「結婚しないのか」、「若夫婦」など言われている。
「さっきね、顔は怖いだけど硬派なイケメンな男の人がうちに来たのよ。イケメンでガタイもよく身長もあってとびきり上等の!その人が公園に入って行ったから美奈子ちゃんに代わりにじっくり見てきて貰おうと思ったんだけど…」
「ふふっ!もう、ミーハーなんだから」
他愛の無い会話を交わして購入した品を手に店を後にし、元来た通りを同棲している家に向かって歩き出す。