第12章 おはようの挨拶より最優先
よし、琉夏ちゃんが起きる前にお化粧しちゃおう!寝起きの顔はさすがにあんまり見られたくないしね。
小さく苦笑してから最小限の動きで琉夏ちゃんの腕の中から脱け出していく。
「ん…っ…よい、っしょ…っと…」
「………んんん…っ」
「っ!」
意識がないからかいつもより重く感じた彼の腕をそっと横に退かしベッドの下に足を置いた瞬間、琉夏ちゃんが小さく唸りさっきまで私を抱いていた方の腕をシーツの上でもぞもぞと動かした。
「んん…美奈子……」
「っ!」
呻きと一緒に漏れた声は私の名を呼ぶ掠れ声で、思わず心臓が跳ね上がる。
空っぽになったシーツの上を何かを探すように上下に動く腕が求めているのは明らかに私で、
「美奈子……美奈子……ん…」
その動きとその声と、眠ったままにも関わらず何となく不安げに下がった眉がすごくすごく可愛くて胸がキュンと縮まった。
「か、可愛いいい~…」
シュッシュッと布を擦る音を立てながらなおも動く腕を見つめ顔を綻ばせていたけどいい加減どうにかしないと起きてしまいそうだと我に返った。
どうしようとキョロキョロと辺りを見回しある一点で動きを止める。
「あれならバッチリかも…!」
忍び足で部屋の隅までいくと目当てのものを抱え再びベッドサイドまで戻った。
「…もうちょっと眠ってていいからね…琉夏ちゃん」
そっと囁き、さっきまで私がいた場所に持ってきた大きなイルカを横たわらせる。
「ん…美奈子…」
するとすぐに琉夏ちゃんは、彷徨わせていた手でイルカを見つけ、掻き抱くようにそれを自分の胸へと引き寄せると安心したように寝息を立て始めた。
「~っ!!!」
か、可愛い…っ!もう琉夏ちゃん可愛すぎる…っ!
ちょっとイルカが羨ましいし…!
大の大人がフワフワのアクアブルー色の毛をしたイルカを抱っこして眠る姿の破壊力は凄まじく、私はそのあまりの愛らしさに脚が崩れそうだった。
「はっ!カメラ♡カメラ♡♡」
可愛いらしい姿を何枚もパシャリパシャリと写した。