第12章 おはようの挨拶より最優先
琉夏と美奈子は大学生で、
2人で同棲中のお話しーーーー
「んん…」
あたたかくて心地好い温度。
少し窮屈なのにそれがまたすごく幸せに感じる。
目を開けて一番最初に飛び込んできたのは滑らかな白い肌に浮かび上がった鎖骨。
それが呼吸につられて僅かに上下するのを鼻先で感じるくらい私は自分を包み込む恋人の間近にいた。
おやすみって言った時のままの格好…。
ただ薄いシーツは彼の肩の曲線から滑り落ちていて、カーテンの隙間から射し込む朝陽が肌を透かしているように見えた。
「おはよう…琉夏ちゃん」
そっと囁くような朝の挨拶に返ってきたのはスースーという気持ち良さそうな寝息。
触れ合った身体から伝わってくるゆったりとした心拍にまた私の目蓋が重みを増していってしまって慌てて目を見開いた。
窓の外から微かに聞こえる僅かばかりの車の往来音と目覚めたばかりの鳥の囀り。
ジョギングする人が軽やかに石畳を踏む音に時折聞こえる自転車のブレーキ音。
いつも微睡みのなか聞いている朝の音なのに琉夏ちゃんの腕の中で聞くと全然違って聞こえるから不思議だ。
全てが新鮮で愛すべきもののような気がしてくる。
スンッと鼻を鳴らせばいつもの部屋の香りに混じって琉夏ちゃんの香りがした。
涼やかでほんのり甘い彼の香りは私の甘えたがりスイッチをオンにする。
起きなくちゃ起きなくちゃと胸の内で唱えるように繰り返す私に、あとちょっとだけいいんじゃない?ともう一人の自分が誘惑していた。
「んん~…」
顔をきゅっと琉夏ちゃんの胸元に押し付けて理性と本能を格闘させる。
目蓋が急速に重みを増して視界から光を奪っていった。