第10章 ボディーガード?番犬?悪いオオカミ?前編
「あ、美奈子~!」
「……る、琉夏ちゃん……!」
帽子や眼鏡といった変装アイテムを一切装備していない、素のままの琉夏がヘラっと笑いながらひらひらと手を振っている。
美奈子は人だかりが作る壁に身体を突進し、琉夏の腕を手繰り寄せると、女子生徒達の輪からズボッと彼を引っ張り出した。
「琉夏ちゃん……!どうしたの?何でここに?バイトじゃなかったの……?」
「ごめんね、何の連絡も無しにいきなり押し掛けちゃって。迎えに来ちゃった♪」
「来ちゃったって……でも、バイトは??」
「あ、その辺は大丈夫大丈夫。ちゃんと全部終わらせ店長にも言ってあるから心配ご無用~」
(うーん、本当かなぁ……)
あはっ、と笑う琉夏に真偽の程を疑ってしまうも、それでも彼が目の前にいるという事実は嬉しい。
凄く、凄く嬉しい。
「迎えに来てくれてありがとう、琉夏ちゃん」
「どういたしまして」
今の今まで胸に思い返していた笑顔を前に、美奈子の頬もつい緩んでしまう。
だが、周囲の視線にそうもゆっくりとはしてられず、美奈子は彼の腕をグイッと引っ張ると、慌ててその場から離れた。
「取り敢えず何処か行こう?琉夏ちゃん、ここまで何で来たの?」
「バイクだよ。そこのパーキングに停めてあるから、このまま何か食べに行こっか。俺、お腹空いた~。お腹と背中がくっついちゃうかも……」
「何も食べてないの?そうだね、じゃあ何か食べよっか。琉夏ちゃんは何食べたい?」
「俺?そんなの、もっちろん美奈子の手作り料理が食べたい!あ、愛情はたっぷり入れてね?」
「ふふっ!勿論入れるよ。それで味が濃くなっても知らないんだからね?」
大学を離れ、歩き出した二人の手は自然と一つに繋がる。
繋いだ手を琉夏が前後にぷらぷらと振るのを、美奈子は顔を綻ばせて微笑む。