第10章 ボディーガード?番犬?悪いオオカミ?前編
「ったく、どうしてくれんだよ!俺に恥かかせやがって……あの馬鹿女!諭吉まで失うしよ~」
「まあまあ…今度女紹介してやっから(笑)」
苛立ち露に男性が靴先で芝を蹴り上げ、その矛先を次には近くの花壇へと向ける。
そこは白く愛らしい、可憐なデイジーが咲き乱れる花壇。
男性の脚がヒュッと振りかぶり、花壇の花々を蹴り上げようとした、その刹那。
―――ガッ、
「なっ………?!」
憂さ晴らしに投げ出した脚が突然何者かに食い止められ、驚きから男性が瞳を真ん丸に見開いた。
男性が勢い良く蹴り上げた革靴の硬い靴先を、デイジーに当たる寸手の所で防いだのは―――、
琉夏の長い膝下。
男性の蹴りを脛で受け、かなりの衝撃だった筈だ。
脛の骨が鈍い音を響かせるも、琉夏の眉は微塵にも動かない。
「………訂正してくれる?」
そう低い声で切り出す琉夏に、男性達はたじろぎながら後退った。
突然目の前に現れた帽子の男の、鬼気迫る眼差しに全身から滲み出ている気迫とに、だ。
「…な、何だお前……?!」
「どっから出てきたんだよ?!」
「さっきのお前の発言だよ……今すぐ訂正してくれる?」
「は……はぁ?」
正面に向かい合って立つ琉夏を上から下までじろじろと眺め、男性が「ああ」と合点がいったのか、ハッと鼻で笑った。
「そうか!お前、あの女が好きだって言ってた男か!ハハッ、笑えるな!自分の女を侮辱されて腹立ったってとこか?!」
琉夏を嘲笑いながら指差す男性には、今しがたまで美奈子に告白をしていた時の真摯な面影は更々無い。
ただ下卑た高笑いに中傷とを繰り返し吐く、最低な男のそれでしかない。
「どうせあれだろ?あんたもあの女がはば学で有名なローズクイーンだからって手を出した口だろ?すぐヤらせてくれたか?」
そんな男たちに、
そんな奴らに、
美奈子を口汚く罵られて笑って見過ごせる程、琉夏も完璧な「ヒーロー」じゃない。
「……―――大概にしろよ?」