第10章 ボディーガード?番犬?悪いオオカミ?前編
「私を想ってくれていた事は本当に……ありがとう。でも、ごめんなさい。私……ずっと一緒にいたい大好きな人がいるから」
美奈子が切り出す言葉に、離れた位置に座る琉夏の睫毛がぱしりと瞬く。
「好きな人じゃなくて大好きな人か……。小並らしいな」
「あ…、ごめん……なさい」
「いや、謝らないでよ。そうやってハッキリ言われた方が返って気持ちいいしさ。小並の好きな人って、どんな人なの?」
「え?」
「聞いてもいいかな。聞きたいんだ、お前が好きになる人ってどんな感じの人なのかなって」
「え…と、私の好きな人……は……」
―――それは離れていても。
中庭に立つ二人から距離は離れていても、琉夏の耳は美奈子の声をちゃんと拾う。
ぽつり、ぽつぽつと切り出される小さな彼女の声を、次第にはっきりと芯のある口調で語り出す彼女の声を、琉夏の耳は拾っていく。
「優しくて……明るくてね。皆に気遣えて、一番に自分の事を後回しにしちゃうような……それでも"良かったね"って笑うような、そんな人というか……ヒーローなの。」
それはきっと美奈子が目の前にいる男性にではなく、琉夏を想って口にする声だからなのだろう。
「琉夏へ」の言葉だから、風も光も距離も跨いでより耳に届くのかもしれない。
「悲しい想いも沢山知ってる人なのに真っ直ぐで……一緒にいるとね、私まで笑顔が伝染しちゃうような人で……」
耳にも、
ハートにも、
美奈子の想いは届く、伝わる。
琉夏に―――……。
「ずっと一緒にいたい。ずっと隣で彼の笑顔を見ていたいなって思う、大好きな……お日様みたいな人だよ」