第10章 ボディーガード?番犬?悪いオオカミ?前編
「俺……初めてお前を見た時から、いいなって気になってたんだ」
「え……?」
「明るいし気が利くし、何をするにも一生懸命で頑張り屋でさ。誰に対しても優しいし。ああ、何かいいなって……」
「それって……」
「気付いたら、小並を……友達以上に見てた」
まさかこの場に琉夏が居るとは、美奈子ですら露にも思わないだろう。
予感的中。
男性は頬を染めながら告白タイムに突入しており、美奈子もまたベンチに身を潜める彼氏の存在になど全く気付く気配は無い。
「それからお前の事、目で追い掛けてばかりでさ……」
「そう……なんだ」
「すげぇ……好きになってた」
帽子の庇、つば部分を指先でチョンッと上げ、会話をより拾う為に琉夏が耳を傾ける。
男性が照れながら、上を向いたり下を向いたりとしながらも繰り出す「告白」は、悪者退治に意気込んでいた琉夏の胸をチリッと焦がした。
「俺……小並の事…美奈子が好きだ」
ベンチの背凭れの縁から様子を窺っていた琉夏が、帽子を改めて目深に被ると元のようにちょこんと座り直した。
背凭れに背中をずるっとスライドさせて、そうして頭上から降り注ぐ木漏れ日のシャワーを見詰める。
(これ……俺がもし今日ここに来てなかったら、美奈子が告白されてた事も知らないで、講義受けたりバイトしてたんだよなぁ……)
誰かの告白現場に立ち会う機会は人生に於いて早々無いだろう。
況してや、自分の彼女へ第三者が想いを告げるシーンなんて尚更だ。
(せいちゃんたち皆にチヤホヤされて目が離せないって思ってたのに……)
もしや自分の知る由も無い所で、敵はかなりの数に及んでいるのかもしれない。
勝手な推測ながら、琉夏はどうしたものか、前途多難だと天を仰いだ。
お姫様だと比喩した可愛い可愛い彼女は、いつ悪者さん達に悪のアジトへ連れ込まれるか知れたもんじゃない。
琉夏の彼女だと知っていながら彼女に顔を合わせる度に言い寄る悪者達、若干五名に身に覚えがあるだけに、琉夏が「う~ん…」と手に顎を乗せて今後の対策を考え倦ねる。
そんな琉夏の背後で、美奈子が静かに口を開いた。