第2章 いつだって神様は 私に微笑んでくれたことはなかった
03 わたしがおもうよりも、
「ここに来てから還無ちゃんずーっと働いてくれたから、今日はお休みしていいよ!」
と、朝マキノさんに会ったら言われたため。
私は、山へと来ていた。
「……ここくらいまで来たら、大丈夫かな…」
山へ来たのは、人目がつかない場所へ来たかったから。この世界へ来てから、個性を使ったり運動することがなかった。このままぬるま湯に浸かっていてはいけないと思い、折角の休日だ、特訓しよう、と思い立ったのだ。
「さて、まずはアップがてら走って…木だと目立つから…何かの花でやろうかな…」
そうひとり呟いて、私は誰もいない山道を駆け出した。
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ランニングして身体も温まった頃、私はある一輪の花を見つめていた。そしてその花の刻を限界まで進め、そして限界まで戻す、ということを繰り返していた。集中力と根気、そして慎重さが必要なものだ。一瞬でも気を抜けば、戻しすぎて消滅してしまう。……そういえば私は、消滅したものを戻すことができるのだろうか。傷や体力は治してきたし、これからリカバリーガールの元で病気の刻を戻す特訓もするはずだった。ただ、消滅したものを治すことは、したことがなかった。
「…やってみようかな。」
折角だ、試してみようと見つめていた花を摘んで手に取った。そして、花弁を数枚抜いた。
「…よし、」
意気込んだ私は、花弁が無くなってしまった花を見つめた。個性を発動させると、
「……で、きた」
失われた花弁の刻を戻すことができた。ただ少しだけ目の奥が痛い。たった花一輪の、数枚の花弁。それでもただ刻を戻すだけでなく、失われたものを一から戻すというのは、負担になりやすいようだ。
しばらくは、これを上げられるように特訓しよう。(なんて名前つけようかな)そう、意気込んだところで
「す、っげーーー!」
聞き覚えのない、男の子の声が聞こえた。