第2章 いつだって神様は 私に微笑んでくれたことはなかった
隣を歩いてついてくるシャンクスさんをそのままに、私は市場での買物を始めた。
「おじさん、ジャガイモと、ピーマンと、トマトが欲しいんです。ありますか?」
「ジャガイモは裏にあるから持ってくるよ。ちょっと待ってな!」
そう言って裏へと歩いてゆくおじさんを片目に、隣を見やる。
「あの女のひと、きれーだなー。」
放っといて良さそうなので、そのまま放っておくことにする。シャンクスさんは、飄々としていてよくわからない。船長、という肩書があるだけ隙はない。けれど、今のように女の人には目がないし、お酒も飲みだすと止まらない。船員の人達にも舐められているようで、けれど尊敬されていて。掴み所がない。ここ数日で私の彼への印象だ。
「持ってきたぜ、還無ちゃん!これで足りるかい?」
「ありがとうございます。」
「この果物はおまけだ。マキノさんと食べな!」
「良いんですか?ありがとうございます。」
袋に注文した野菜をいれて持ってきてくれたおじさん。お金を支払い(ベリーというお金なのも驚いた)紙袋を受け取ろうとした。
「あ、」
「こういうのは男に持たせりゃいーんだよ」
受け取ろうとした私の手より先に、シャンクスさんの手が袋に触れ持ち上げてしまった。
「良いですよそんな!私が頼まれたことですシャンクスさんの仕事ではありません!」
「いーからいーから。あとは何買うんだ?いくぞー。」
そう言ってすたすたと先へ歩いてゆくシャンクスさん。
「……もう。」
「いーじゃねーか、還無ちゃん。男をたててやんな!」
「…しらないですよ、そんなこと。……おまけ、ありがとうございました!」
「おう!また来てくれよ!」
男をたてろとか、そんなこと知らないし知るつもりもない。
おじさんにお礼だけ伝え、先を歩くシャンクスさんを追いかけた。
「この魚うまそーだな!これ買っていいか?」
「…勝手に買わないでくださいよ…!でも、魚も予定に入っているので買います。選んで良いですよ。」
よくわからない、この年上の男は。相澤先生とそんなに年は変わらないはず。相澤先生が確か、30くらいだったから。そんな先生とは全然違って落ち着きのない人。
(20191021)