第2章 いつだって神様は 私に微笑んでくれたことはなかった
「…乾いた?」
「…… 還無、お前何をしたんだ?」
「還無、ちゃん…?」
びしょ濡れだったシャンクスさんが、突然乾いたことに驚く2人。シャンクスさん自身も、自分自身に驚いている。
「…これ、乾いたとかそんなんじゃねえぞ。おれ、酒臭くねえ!」
「……本当だな、酒の臭いがしねぇ。」
何をしたんだ?という意味も込めてジト目で見てくる彼ら。マキノさんも目を見開いたままだ。
「私の個性ですよ。見たがっていたでしょう?」
「…乾かすのか?いや、なんだこれ…まるで、酒に濡れる前に戻ったみてぇだ……」
「…! まさか、」
シャンクスさんの発言を受けて、考えるそぶりを見せたと思ったらすぐに声をあげるベンさん。流石、赤髪海賊団の頭脳なだけある。(私が勝手に思っているだけだけど)
「きっとベックさんが考えたので間違いないでしょう。私は、シャンクスさんの刻を少しだけ戻したんです。」
だからお酒の臭いもしないんです。かけられる前に戻ったんですから、と付け加える。3人は唖然とした表情のままだ。
「つまり、私の個性は刻です。こっちの悪魔の実のように言ったら、トキトキの実とかになるんですかね?」
「……」
「シャンクスさん?」
「…すっげーーー!!お前、そんな力あったのか!!」
びくっ、と、シャンクスさんの声に驚いた海賊団の皆が此方を見やる。
「ちょっと煩いです。周りにわからないようにやったのに。」
「わりーわりー!感動しちまった!還無お前、無敵じゃなえか!」
その力があれば、敵無しじゃねえかなりたかったヒーローも余裕なんじゃねえのか?!と続ける。
「…そんな、簡単な話ではないですよ。強い力にはリスクがつきものでしょう?」
「…お前のその力にも、あるのか?」
「……悪魔の実にだって、ありますよね?身体に負担がかかったりとか。」
「…そうだな、」
どんなに強い力であっても、それを行使するのは人間の身体だ。人間の身体には、限界がある。だからこそその限界を伸ばすために、特訓するのだ。
「ま、こういう個性だからこそ。ヒーローを目指しているんですけどね。」
(20191023)