第2章 いつだって神様は 私に微笑んでくれたことはなかった
04 せかいはざんこくで、
サボくんとエースくんに出会ったあの日から、あの山へ行くと3人でよく会うようになった。最初は毛を逆立てた猫のように警戒心剥き出しだったけれど、共に過ごすうちに慣れてくれたようだ。今では私の練習がてら、傷を差し出してくる。
2人にも色々と理由があるようで、何を今しているのか、何をしてそんな怪我を負っているのか、気になるけれど聞くことはしない。それを聞いてしまったら、私のことも話さなければいけなくなるから。(…きっと、緑谷くんのような人なら、踏み込んでいくんだほうなあ。)
「…それで、何があったんですか?」
今日も今日とてマキノさんに言われたものを買って、酒屋へ戻った。するとその酒屋には、どうやら陸に戻ってきた赤髪海賊団。いつものように馬鹿騒ぎしているのは変わらないけれど、扉を開けた瞬間ルフィくんが飛び出して行った。そして、視線の先にはびしょ濡れのシャンクスさん。
「ああ、お頭のこれか?酒ぶっかけられたんだようけるよな!」
ヤソップさんがなんてことないないように言う。どうやら山賊が来てお酒をぶっかけられたらしい。それに対して怒りを抱かない彼らに、怒ってしまったルフィくんが飛び出していったようだった。…たしかに、酒屋自体も、散らかって物が散乱している。
「気にするほどのことじゃねえんだけどなー…ルフィのやつ…」
「まああいつなりに思うことがあったんだろう」
シャンクスさんたちは、随分と大人な対応をしたようだ。まだ7歳の、ルフィくんが納得できないのも致し方ない。
「……シャンクスさん、」
「ん?どうした、還無?」
そしてまた赤髪海賊団の人たちは、それぞれに会話を始めて盛り上がる。シャンクスさんのところで彼を注視しているのは私とベンさん、マキノさんだけだ。
「…見せてあげますよ、」
「え、」
それだけ言うと、私は一度目を閉じた。
「お前、目が…」
「…個性、発動。」
特にまだ、技名は決めていないから。何かを言うわけではないけれど。