第1章 崩される計画
目線が高くなった事に気付いたのか、慌てて肩に掴まった
それを感じると一気に上空へと飛び上がる
大きく円を描くようにして飛行し、北へと身体を向けた
女が言った通りに森を北上する
やがて1本だった道が複数に分かれ、道沿いに建てられた家も見えて来た
「どれだ」
そう声を掛けると女が俯けていた顔を上げる
下を除くと細い指で1つの家を指した
「あれです。あの青い屋根の家です」
「分かった」
女を抱え直し、指し示した家に向けて降下する
スカウターには他の生命体の反応が無い
「ここは……他には誰も居ないのか」
「別荘地なので長期休暇の時以外はほとんど無人です」
「お前はここで何をしている」
「家の掃除に……なかなか終わりませんけど」
「……そうか」
女が一瞬悲しそうな顔をしたのは気のせいだろうか
そう思いながら青い屋根の家に近付いた
ドアの前に立つと女を腕から下ろす
「ありがとうございました」
そう言い、笑顔を見せて頭を下げた
「……大した事じゃない」
「困っていたんです。助かりました」
「そうか」
「あの、お礼にお茶を飲んで行きませんか?」
「茶?」
「はい。紅茶なんですけど……」
「紅茶……?」
「?」
「飲んだ事がない」
「そう……ですか……」
「……飲ませろ」
「あ、はい!どうぞ、入ってください」
女が嬉しそうにそう言い、ドアのロックを外す
中に入るように促され、それに従った
「淹れている間、座って待っていてください」
「ああ……。お前、名前は?」
「あ、失礼しました。ルクリアです」
「ルクリア……か。良い名だな」
「ありがとうございます。あなたは?」
「……ラディッツ」
「ラディッツさん。素敵なお名前ですね」
「そうか?」
「はい。あ、どうぞ」
ルクリアが先を歩き、その後に続く
まだ足が痛むのか多少引きずっているように見えた
突き当たりのドアを開けると、大きな窓が正面にある
その手前にソファとテーブルが置かれていた
「少し待っていてくださいね」
「ああ」
ルクリアが部屋続きのキッチンに入るのを見てソファに腰を下ろす
「……」
ラディッツは腕を組むと室内を見回した
フリーザの母船では見かけない物ばかり置かれている
部屋の隅には箱が置かれ、側には本が積まれていた