第3章 記念写真
「あ、そうだ。ルクリア」
「はい?」
「教官が合格した記念に写真でも撮ったらどうだって言ってたんだが……」
「あ、良いですね。行きましょうか」
「お前も写れよ」
「え?」
「1人で写るのって緊張する……今日、証明写真ってやつ取るのに5回やり直したんだ」
「5回も撮ったんですか?」
「目付き悪いとかもう少し笑えって言われた……目付きは生まれつき悪いんだがな」
「で、でも、せっかくの記念に私が一緒に写っちゃって良いんですか?」
「ああ。時間ある時で良いから」
「はい。……服、選ばないと」
自分が目立たず、ラディッツの隣に立ってつり合う様な服
夜にでも部屋の中を探してみようか
ルクリアはそう思い、ティーカップに口をつけた
「う~ん……これで良いかな」
朝から何度も鏡とクローゼットの間を行き来している
家を出る時間が迫り、ようやく1着のワンピースに決めた
それに着替えると髪型を整えて部屋を出る
隣のラディッツの部屋の方を見ると、ドアが開いて室内が見えていた
隙間から中を覗くと彼が背を向けて立っているのが見える
左耳に手を当てたまま動かない彼
どうしたのかと思っていると、不意にこちらに顔を向けた
普段は着けていないスカウターを耳に当てて押さえている
視線が合うと耳から外して内側のスイッチを押した
「支度、終わったか」
「は、はい。あの、何かあったんですか?」
「いや……時々、気になるんだ。あいつら、何してるかなって」
「ラディッツさんの事、何か話してますか?」
「何も。死んだ事にされてるな」
「探しに来たりとかしないんですか?」
「しないだろうな。フリーザにとって何の痛手にもならん」
そう言いながらスカウターを窓際の棚に置く
こちらに近付いてくると頭から爪先まで視線を巡らされた
「……変、ですか?」
「いや、その……」
「?」
「……か、可愛い、な」
「ありがとうございます」
「お前、明るい色が似合う」
「そうですか?」
「ああ。……そろそろ時間だな」
「はい。行きましょうか」
「待て、このネクタイ……上手く出来ない」
その言葉にルクリアがこちらに腕を伸ばす
何度自分でやっても彼女がやってくれるように綺麗な形に出来なかった
ネクタイを締めると襟を直して軽く肩を払われる