第3章 記念写真
「……あの頃は……命令を聞く事しか出来なかったからな……」
そう呟き、左手に下げた紙袋を持ち直す
いつかは違和感無く街を歩けるようになるのだろうか
そう思いながら青に変わった信号を渡った
視線を上げるとルクリアが住むマンションが見える
そちらへと向かって歩き出すと、背後から声を掛けられた
「ラディッツさん」
「ルクリア?」
「お帰りなさい。朝からどこに行ってたんですか?」
「ちょっとな……お前は買い物か?」
「はい。お昼ご飯を作ってたんですけど、卵が足りなくて」
「昼飯……そういや、腹減ったな」
「もう1時過ぎてますからね。もうほとんど出来上がってるから、帰ったらすぐに食べられますよ」
「ああ」
話をしながらルクリアが抱えている袋を持ち直す
中には卵以外にも沢山物が入っているのが見えた
無言でそちらに手を出すと、その袋を取り上げる
「あっ……」
「重いんだろ。俺が持つ」
「大丈夫ですよ、それくらい……」
「フラついてたぞ」
そう言うとルクリアは恥ずかしそうに視線を落とした
右腕を左手で摩りながら小さく溜息を吐く
「もう少し、筋力つけたほうが良いですね」
「確かに身体は細いが……そのくらいで良いんじゃないか?」
「そう……ですか?」
「ああ。重い物なら俺が持つさ」
「ありがとうございます」
そう言い、彼女が微笑んだ
可愛らしいその表情に思わずこちらにまで笑みが浮かぶ
だが、次の瞬間には溜息を吐いて肩を落とした
「ど、どうしたんですか?」
「……腹減った」
「大丈夫ですか?」
「帰ろう。早く食いたい」
「はい」
歩き出す自分の隣にルクリアが並んだ
店の前で咲く花を眺めながら歩く彼女
ラディッツはルクリアから視線を逸らすと左手の紙袋を見た
顔を見たらすぐに言おうとしたのに、何故言い出せなかったのだろう
(……飯、食ってからで良いか)
この事を話したらどんな反応をするだろう
ラディッツはそう思いながら隣を歩くルクリアに視線を戻した
空になった皿をルクリアが片付ける
重ねた皿を持っていくと、自分を見て彼女が笑みを浮かべた
「ありがとうございます。ご飯、足りましたか?」
「ああ。丁度良い」
「良かった」
そう言い、スポンジを片手に水を流す
洗剤を手に取ったところで彼女がこちらを見た