第1章 君の音色/志水
『Σえぇ!?///な、何言ってんの!?志水君だってセレクションがあるんだょ?練習時間割いちゃ駄目だょ!』
邑林先輩は慌てて首を振り、無理だと主張。
確かに…
1日、1日と、時間が経つのが早くて…
毎日時間が足りない。
「じゃ、ほんの少しでいいからさ!暇が出来て、気が向いた時でいいから!ね?」
尚もお願いをする來村先輩は、ふんわりと僕の頭を撫でた。
その行動を下から覗き込み見上げると、來村先輩は本当に優しい笑顔をしていて…
「息抜きにもなると思うしさ。」
等と、僕の事を気遣う言葉。
そんな來村先輩は、誰かに似てる気がして…
ぅーん…。
思い…出せません。
そんな事を考えつつも、自然と僕もつられて笑顔になりました。
…そんな僕を見て、かな?
來村先輩の撫でていた手が一瞬止まると、次の瞬間にはぐちゃぐちゃにするように強く撫で出しました。
「わっ、來村、先輩?」
驚いて、恐る恐る顔を上げると、來村先輩の頬が真っ赤に染まり、瞳を揺らしていました。
「望ちゃん、志水君に憧れて本格的にチェロの練習しだしたんだ。チェロを自腹で買っちゃうくらいね。凄いでしょ?…だから、だからね!少しでいいの。ほんの少しでいいから、今より関わって上げて欲しいんだ…」
來村先輩は眉間を寄せながら笑顔を作る。
何処か辛そうなその表情は、何となくですが…先輩らしくないと思いました。
でも、きっとそれは邑林先輩の事を想うからで…
そんな一生懸命な姿に、応えようと思ったんです。
「はぃ。邑林先輩さぇ良ければ。」