第1章 君の音色/志水
日野先輩と邑林先輩、その場に居合わせた僕も同じ事を思っていました。
「私、合唱部じゃん?次に唄う曲がAmazing Graceのソロパートが入ってるん…だ///」
はにかみながら、口ごもる來村先輩。
どうやら、自分の練習を兼ねて頼んでいたようですね。
「なーんだぁ。そうだったのかぁ!」
と、日野先輩。
『おめでとう!廻!』
と、邑林先輩。
何だかんだで仲が良い3人です。
『けど、廻ソレを頼むなら梁太郎にお願いしたら?』
……梁、太郎…?
邑林先輩の口から親しげな男性の名前が出た途端、何んだろ……?
喉の奥が…キュッと締まる感じがしました。
「そぅだね!土浦君ならピアノだし!!そっちの方が解りやすいんじゃなぃ?」
…??
土浦、先輩?
「そっか!!Σ(゚ロ゚;)その手があった!つっちーピアノ弾けたんだった!こぅしちゃいられない!つっちーに襲撃…「しにくるなよ!!」」
『「「Σ!?」」』
來村先輩が力み、話がエスカレートしていく中、綺麗に突っ込みを入れたのは…
屋上へ『今』来た、とばかりに扉を開けた土浦先輩でした。
『あ。梁太郎。』
突然の登場で僕を含め先輩達が驚いて固まってしまったのにも関わらず、唯一、驚かなかったのは邑林先輩一人だけです。
…『梁太郎』って土浦先輩の事だったんですね。
「よぅ。“望”、やっぱり此処にいたのか。」
…でも、
…どぅして、
「実はなァ。お前に頼まれてた楽譜だが…って、──志水?」
…名前で呼び合う仲なんだろぅ?