第1章 君の音色/志水
───ガチャン!!
僕が驚いて思考を巡らさせていると、屋上の扉が活きよい良く開きました。
「うわぁぁん!望ちゃぁぁん!」
。゚。(8д8)。゚。
『ん?Σ(゚ロ゚;)え!?ちょ…廻!?』
突如騒がしく現れたのは、邑林先輩と同じく日野先輩の友人である二年生の……えっと…。
「こらぁ!廻!いい加減に楽譜返しなさい!」
……ぁ。
思い出しました。
來村廻先輩です。
「もぅちょっとぐらいいいじゃぁん!」
・゚・(>д<)・゚・
來村先輩は、チェロを抱えている邑林先輩に飛びつく活きよいで泣きつき…
その來村先輩を凄い形相で追い掛けてきた日野先輩…ι
ここだけの話ですが…
ちょっと恐かったです。
『香穂ちゃん…一体どぅしたの?』
「望~!聞いてよぉ~廻ったらね…次のセレクションで弾く課題曲の楽譜を持ってったきり、返してくれないのよ。」
『えぇ!?…それは、駄目だょ?』
「だってぇ!香穂ちゃんが素直にAmazing Graceを弾いてくれないから!」
「もー…だから上手く弾けないんだってばι」
「だから“下手でも良い”って言ってるじゃん!」
『廻…ι香穂ちゃん困らせちゃぁ駄目だよー?』
抱き付いている來村先輩の頭をポンポンと撫でる邑林先輩。
その表情はとても優しくて…
何故だか僕の胸の奥がキュウゥっと苦しくなりました。
來村先輩は拗ねて頬を膨らましていましたが、邑林先輩の言うことは素直に聞くようで…
それまでの言い合いが嘘のように、持っていた楽譜を返しました。
それにしても…
『「どぅして、Amazing Grace?」』