第2章 君の歌声/土浦
恋愛を語るには、俺自身が経験が浅すぎて、ためになる言葉なんて思いつかない。
だからって友情という言葉に擦り付けて、その小さな背中を抱いてしまうのは…違う気がする。
ゆっくりと振り返る來村。
『遠慮するほどお人好しじゃないけど、…こんな気持ちで大好きな望ちゃんを差し置いて、志水君を好きだって言いたくないって思った。半端に知れたりしたら…それこそ望ちゃん、1人で悩んで、傷ついちゃうタイプだしね。』
(…ぃぃ奴。でもって、損な性分だな。)
目を閉じ、“参った”と自分の額に掛かる髪を掻き揚げた。
(完全に好きだ。)
湧き上がる想いは、溜め息として吐き出し、來村の頭を乱雑に撫でた。
『Σ!?、な、何?ΣΣあ、今、私を哀れんだでしょ!?勘違いしないでょ?望ちゃんが片想いだったなら話は別なんだからね?見てる限り偶々、両想いみたいだから…、』
何を勘違いしたのか一人焦る、來村。
そんな見慣れない來村を宥めながら、可愛いとか。
(俺にしとけばいい…とか。)
気付いちまった気持ちには、もぅ歯止めはきかない。
なら、ゆっくり。
ゆっくり伝えればいい。
この曲のように…
───♪~
『ぁ…“エリーゼの為に”?』
目を瞑って聞く來村。
『ぃぃ曲だよね…甘くて…包み込むように優しくて…少し…切ない。』
想いを乗せ優しく、ゆるやかに弾く。
「…お前の良さを見てる奴が居るかもしんねーし…周りもよく見ろよ。」
『何?その“ありきたり”な慰めー?』
「別に。志水ばっか気にしてっから、初失恋のお前にありがたい、ありがたーい、土浦様からのアドバイスをくれてやったまでだ。」
『ぷっ、強調しすぎだし!(*´ψ`*)しかも“失恋”とか多少凹んでんだから遠慮して伏せろよなー!全く、つっちーは本当、空気を読まない失礼な奴だなー。けど…ありがと。元気でたかも。』
來村の笑顔が戻る。
少し整理がついた様だ。