第2章 君の歌声/土浦
「それで“好きかどうか、解らなくなった”ってわけか。…お前さ、女なんだし恋愛の一つや二つぐらい経験したことぐらい…」
『無いんだよ。』
「は?」
『経験があれば、比較できるんだろうけどねー。残念ながら、そーいう浮いた経験が今まで無くって…話にもならんわけよ。』
「…マジかよ。」
『本気と書いて“マジ”。…だからさ、友達に言われた事を色々考えたらさー…確かにそうかもー?とか、思っちゃったり…?テへ☆』
「…“テへ☆”って語尾上げてんじゃねぇ!」
ったく、親身に聞いてやったつーのに、シリアスぶち壊しやがって!!
「けど、お前…俺から見た感じでも、志水を構ってる時なんて病的だったぜ?アレは“好き”つー表現だろーが。」
『んー、…けどヤッパリ“恋愛”の好きとは違う気がするー、みないなー?』
「…はぁ。肝心の当事者がそぅ思うなら、そぅかもな?」
『でしょ?』
來村はニッとわらってみせた。
けど、それが余計痛々しく感じる。
(“違う”つーなら…何で今にも泣きそうな目してんだ。)
慣れない感覚にガシガシっと自分の頭を掻く。
「來村、今日はもー歌うな。」
『Σ…うえぇ!?(゚Д゚;)練習付きあってくれるって言t…、「いいから、歌うな!!その代わり…お前の好きな曲、弾いてやるから……その、元気出せ。な?」』
『つっちぃ…』
──“らしくねぇ”よな。
「曲、何がいいんだ?」
──泣きそうなお前も、そんなお前を見て妙に落ち着かない俺も…
『じゃぁ…ベートーベンの夜想曲…』
「Σ暗!?お前、もっと彩華な曲を選べよι」
『だって好きなんだもん。』
「…まぁ、俺も気に入ってる曲だしな。OK!まかせとk『1曲だけ?』」
ピアノの椅子へ座り直すと廻は横からピョコと顔を出し、ぎこちない笑顔を向ける。
『1曲だけじゃ、元気でないかも~』
「お前なァ…ιわかった、わかった。何曲でもどーぞ。手当たり次第、好きな曲言えよ。弾ける曲は片っ端から弾いてやる。」