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蝶と蜘蛛

第24章 おまけ(東堂目線)


俺は勝負に負けた。
決して手を抜いたわけでも、ましてや巻ちゃんと遊びたいがためにわざと負けたわけというわけでもない。
本気の勝負で敗北したのだ。

敗北=デートはできない。
すなわち、今回告白をしようと意を決して茉璃をデート誘ったわけだが、それが叶わないということ。
このままでは茉璃に自分の気持ちを伝える機会すら今後巡ってはこないかもしれない。
ならいっそ2人を応援してただただ見守ろう。
そう思っていた。


その日の夜、巻ちゃんは茉璃の母の勧めで俺と同じ部屋に泊まることとなった。
明日からの2日間、共に出かけるのであればこれはこれで都合が良い。
それに巻ちゃんには聞きたいことがあったのだ。

「巻ちゃんは告白はしないのか?」

俺がそう問うと巻ちゃんは一瞬戸惑いの表情を見せた。
それもそうだ。
俺は巻ちゃんに自分の気持ちを伝えているのだから。

「告白、しちまってもいいのかよ」

巻ちゃんはそう遠慮がちに問うてくる。

「好きなのだろう?だったら誰かに盗られて後悔してしまう前にするしかあるまい。それに…」

(茉璃は巻ちゃんのことが好きなのだから)

完全にブーメランだ。
自分で言って胸が痛くなる。
俺は暗くなる気持ちを誤魔化すようにいつものように笑顔を浮かべおちゃらけてみせる。
そして巻ちゃんにある提案をした。

「よし、巻ちゃん。決めたぞ。明日と明後日のどこかで2人きりになるタイミングがあったらその時告白をしろ」

どうせ巻ちゃんは今の関係が保てないならと、そんなことを考えているのだろう。
だったらきっかけを作ってやればいい。
そんなことを考えていると、巻ちゃんは俺に思いがけない事を言う。

「…わかった。隙を見つけて告白するショ。だがそれはお前も同じだ。お前も2人きりになったら告白をする。これで公平ショ」

一瞬、巻ちゃんが何を言っているのか理解できなかった。

告白はもうできないと思っていた。
俺が告白する前に巻ちゃんが気持ちを伝え、2人は付き合う。
そうなれば伝える機会ももうないだろう、と。
だが、伝えるチャンスを巻ちゃんは俺にくれた。
俺が巻ちゃんにチャンスを与えたように。
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