第24章 おまけ(東堂目線)
長瀞山レースの朝。新しいマネージャーだと言って巻ちゃんが連れてきたのは俺の幼馴染みで長年の想い人でもある茉璃だった。
正直、見間違いであって欲しかった。
親友である巻ちゃんと同じ人物を奪い合うなんてことはしたくなかったからだ。
しかし目の前には巻ちゃんの隣に立ち俺の名前を呼ぶ茉璃がいる。
まだ巻ちゃんに好きなのかを確認したわけでもない。
もしかしたら茉璃の他にも新入部員がいるのかもしれない。
俺は僅かばかりの希望を胸に巻ちゃんに声をかける。
「なぁ、巻ちゃん。巻ちゃんは茉璃の事をどう思っている?」
俺の言葉に一瞬戸惑いを見せながらもはぐらかそうとする巻ちゃんの表情からして、俺の勘は当たってしまっているのだろう。
それに先程の茉璃の表情。
俺には一度たりとも見せたことのないその表情は恋する乙女の顔、とでもいうのだろうか。
茉璃が巻ちゃんのことを好きなのは一目瞭然だった。
ただ、冒頭でも言った通り俺は2人のことはある程度理解しているつもりだ。
だから、この2人が気持ちを伝え合うなんてことは想像できなかった。
誰かが背中を押さなければこの2人は一生このままなのではないだろうか。
俺は茉璃の泣いた顔など見たくはない。
誰よりも茉璃の幸せを願っている。
だから俺は巻ちゃんに正直に自分の気持ちを話すことにした。
昔から茉璃のことが好きだったこと。
それは今でも変わらないということ。
それを聞くと巻ちゃんは観念したかのように茉璃を誰にも渡したくないと自身の気持ちを語ってくれた。
その"誰か"の中には俺も入っているのだろう。
だからこそ、俺は勝負を持ちかけた。
元々この3日間で茉璃には告白をするつもりだったので、自分を奮い立たせるにはこの勝負はもってこいだ。
茉璃に振られたとしても、何もせずに終わるぐらいなら自分の気持ちをちゃんと伝えたかった。
そして、巻ちゃんは俺の気持ちを知ってか知らずか、この勝負に乗ってきた。
まさかあの巻ちゃんがデートの阻止が目的とはいえ、一緒に行くだなんて言い出すとは思いもしなかったわけだが。まぁそれは俺が逆の立場でもそうしただろう。