第18章 柔らかい感触
最寄駅につき2人は大きく伸びをして自宅までの道を歩き始める。
すると、道端でお喋りをしている母の様子が目に入った。
『お母さん、ただいま』
私は母に挨拶をし、一緒にいる巻島さんのことを紹介しようとすると、母と一緒に喋っていた女性が急に巻島さんの名前を呼ぶ。
「あら、裕介」
「母さん!?なんでここにいるショ」
「なんでって、私はご近所のお友達とお話ししてただけよ?」
どうやら母と話していたこの女性は巻島さんのお母様のようだ。そして母の友人でもある。
「あら、茉璃と巻島さんところの息子さん、知り合いだったのね」
「そうみたいね」
「ほら茉璃、挨拶なさい」
『えと、富永茉璃と言います。裕介さんにはいつもお世話になっています。』
「あら、貴女が茉璃ちゃんね!聞いていた通り可愛らしいお嬢さんね、」
『え、聞いてた…?』
「ほら、裕介もしっかり挨拶なさい」
「えと、巻島裕介っす…」
「裕介くん、よろしくね。それにしてもこんな偶然あるのねー!」
「そうね」
完全に2人で盛り上がる様子についていけないでいると、母が尽八の存在に気が付き話題をそちらに切り替える。
「あら、もしかして尽八くん?これまた随分男前になって!」
「お久しぶりです。今日から2日間、お世話になります。」
「尽八くん?もしかして東堂尽八くんかしら?裕介から話は聞いてるわ」
「母さん、余計なこと言わなくていいショ」
巻島さんのお母様の言葉ですっかり気をよくした尽八は笑顔で巻島さんの顔を覗き込む。
それに対し巻島さんは必死で顔をそっぽに向けて苦い顔をしていた。