第86章 坂道の先に
その場にへたり込む私に鳴子くんが慌てて駆け寄ってくる。
「茉璃さん!?大丈夫ですか?」
鳴子くんが心配そうに覗き込んだ。
『うん、大丈夫…ホッとしただけ』
掠れた声でそう答えると、鳴子くんは安心したように笑った。
少しして鳴子くんは訪ねてくる。
「それで、巻島さんたち…どうでした?」
『うん、戻ってくるって』
その言葉に鳴子くんの表情がパッと明るくなる。
「ほな急いで小野田くんに伝えな!」
『そうだね』
差し出された彼の手を掴んで立ち上がる。
『ありがとうございました』
本部のスタッフに深く頭を下げ、貸してもらった受話器をそっと戻した。
そして私たちは先ほどより静かになった山頂を並んで歩き出す。
バスの方へ向かう道すがら、胸の奥に少しずつ温かいものが広がっていった。