• テキストサイズ

蝶と蜘蛛

第86章 坂道の先に


その場にへたり込む私に鳴子くんが慌てて駆け寄ってくる。

「茉璃さん!?大丈夫ですか?」

鳴子くんが心配そうに覗き込んだ。

『うん、大丈夫…ホッとしただけ』

掠れた声でそう答えると、鳴子くんは安心したように笑った。

少しして鳴子くんは訪ねてくる。

「それで、巻島さんたち…どうでした?」
『うん、戻ってくるって』

その言葉に鳴子くんの表情がパッと明るくなる。

「ほな急いで小野田くんに伝えな!」
『そうだね』

差し出された彼の手を掴んで立ち上がる。

『ありがとうございました』

本部のスタッフに深く頭を下げ、貸してもらった受話器をそっと戻した。
そして私たちは先ほどより静かになった山頂を並んで歩き出す。
バスの方へ向かう道すがら、胸の奥に少しずつ温かいものが広がっていった。
/ 357ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp