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蝶と蜘蛛

第86章 坂道の先に


本部での確認を終え、バスへと戻る道中、やっとの事で記者たちから解放された小野田くんと合流した。

『お疲れ様、小野田くん』
「お疲れ様です!聞いてください!巻島さん、身を乗り出して応援してくださったのです!お礼を伝えなくてはですね!」
『そうだったんだね。よかったね。伝えてあげて』

そんな会話をしながらみんなの元に戻ると、なんだか微妙な空気に包まれる。
先ほどまで和気藹々と話していたのに、ズンと重たい。
その空気を不思議に思い、あたりを見渡すと先ほどまでいたはずの裕介さんたちの姿が見えない。

「巻島さんたちはどこ?金城さんたちにもみんなやっと会えるね。1日目は会えなかったから。車の中にいるのかな?あっち?…あれ?みんなもう会ったの?」

今泉くんは気まずそうに頷き、みんなは黙ったままだ。
小野田くんはキョロキョロと周りを見回しながら裕介さんたちの姿を探す。

「なんだ〜会ってないの僕だけか。どうりで皆さん変な空気だと思ったよー。じゃあ僕だけいってくるよ。駐車場あっち?お花も見せてくる」

そう言いながら駐車場の方に向かおうとする小野田くんを止めたのは幹だった。

「ごめんなさい。小野田くん…巻島さんは、もう帰ったの」

その言葉に小野田くんの笑顔が凍りついた。
鳴子くんも純太も歯を食いしばり悔しそうな表情を浮かべている。

私の中で何かが弾けた音がした。
すぐに携帯を取り出すと、そこには”圏外”の文字。

私は携帯を握りしめ大会本部へと駆け出した。
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