第85章 揺れる心と押す背中
朝の光が窓から差し込むと、眠っていた山も宿の空気も一変したように感じた。
静かな廊下を歩くと、選手たちの部屋からは小さな物音が聞こえてくる。
私は青八木くんの部屋の前で立ち止まる。
静かにノックし許可をもらって部屋に入る。
「おはよう」
『おはよう、青八木くん。膝の具合はどう?』
「今は痛み止めを飲んで落ち着いてる」
小さな言葉の端々に決意が滲む。
私は青八木くんの前に座り込み、まっすぐと目を見つめる。
『無理するなって言っても、青八木くんはきっと無理…するんだよね?』
「あぁ」
『それなら、私は全力で支える。頑張って。総北を純太をよろしくね、はじめ』
「ありがとう、茉璃」
青八木くんはそっと微笑むと私の頭をそっと撫でた。