第85章 揺れる心と押す背中
小野田くんが買ってきてくれた飲み物を飲み干すと、私たちは自然と帰りの支度を始めた。
「んじゃ、戻るわ。」
裕介さんはロードに跨り、ヘルメットをかぶる。
近くのファミレスで金城さんと田所さんを待たせているらしい。
よく見ると、裕介さんの乗っているロードもジャージも金城さんのものだった。
短い再会が終わろうとしていることに、小野田くんも尽八もどこか切なげな表情をしている。
「じゃあな。坂道、東堂」
「あ、はい!」
「あぁ、巻ちゃん」
私も一緒に見送ろうとすると、裕介さんが私に声をかけた。
「茉璃、一緒に来い」
『え?』
「少し一緒に走るショ」
その言葉に慌ててロードに跨る。
尽八と小野田くんに別れを告げ、急いで裕介さんを追いかけた。