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蝶と蜘蛛

第82章 踏み出す一歩


夕陽が完全に沈む頃、私たちはゆっくりと峰ヶ山を降り始めた。
木々の隙間から見える光はもう橙ではなく、群青に近い色をしている。
街の灯りがポツポツと灯り始め、冷たい風が頰を撫でていった。

『小野田くん、今日はありがとうね。なんか吹っ切れたよ』
「い、いえ!僕は何も!それに僕の方こそ…ありがとうございました」

前を走る彼の背中は、行きよりもずっとまっすぐに見える。
ふと空を見上げると空には一番星。
それが何だか”よくやった”って言ってくれているみたいで胸が少しだけ温かくなる。

裏門坂を登り、校門に近づくと見慣れた4人の影がこちらを見つめている。

「おかえり、茉璃。」
『ただいま、純太、青八木くん』

純太と青八木くんがタオルとボトルを手渡してくれる。

「茉璃さん、ロード経験者やったんか!?」
「富永さん凄く速くてびっくりしたよ!富永さんの登りは箱根学園のーーー」

鳴子くんと今泉くんと話す小野田くんは明るく楽しげだ。

「ありがとうな、茉璃」
『ううん。私も小野田くんに元気もらった。」
「顔色、少し良くなった」
「そうだな、青八木。さっきまでよりずっといい」

その言葉に自然に笑みが溢れた。
胸の奥の重さは軽くなり晴れやかだ。

『2人ともありがとうね!』

目一杯の笑顔でそう伝えると、2人の顔はほのかに赤くなった気がした。
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