第82章 踏み出す一歩
翌日。
部室の前、ロードレーサーの横に立ちながら息を小さく整えた。
こちらに向かってくる小野田くんや鳴子くん、今泉くんの姿が遠くから見える。
3人で仲良く話しているはずなのに、小野田くんの表情はどこか沈んでいて、視線は地面ばかりを見つめている。
『お疲れ、小野田くん、鳴子くん、今泉くん』
声をかけると3人とも少し驚いたように顔を上げた。
「お疲れ様です!茉璃さん!その格好、どないしたんですか?」
鳴子くんが驚くのも無理はない。
私は2年生に上がってから、1度も部活にロードレーサーを持ってくることがなかった。
部員が増え、やることが多くなったというのもあるが、何よりもクライマーである小野田くんが入部してきてくれた事が大きい。
『実は私も乗るんだよね、ロード。1年の頃はよく裕介さんと走った』
「巻島さんとですか!?」
3人は驚きながらこちらを見つめる。
『うん。それで、これから一本、峰ヶ山行こうと思うんだけど…付き合わない?小野田くん』
「えっ?ぼ、僕ですか?」
小野田くんの目が一瞬だけ揺れた。
そして何かを思い出したように少しだけ唇を噛む。
『ゆっくりでいい。ちょっとおしゃべりでもしながら…ね?』
「は、はい…」
小野田くんは小さく頷いた。