第10章 あなたと初めての峰ヶ山
「富永、お前ロード本格的にやってたのか?俺についてきたから流石に驚いたショ」
『中2の頃から幼馴染みと一緒にロードに乗り始めて、たまーに大会にも出てたりはしました。あ、でもその幼馴染みのが断然早くて数回しか勝てたことはないんですけどね』
山頂のすぐ下にある駐車場の端。
私たちはそこで一旦休憩しながら雑談をする事にした。
ロードを立てかけ、巻島さんは腰掛石に座り込む。
私は巻島さんの目の前に立つ事にした。
巻島さんは急に真剣な顔つきをしたかと思うと、思いもよらない質問を私にしてきた。
「そういえば…富永は、その…手嶋とはどうなんショ?」
急な巻島さんの質問に私は頭の上にハテナを浮かべる。
何故ここで純太の名前が出てくるのだろう。
考え込んでいると、また巻島さんからの質問が投げかけられた。
「その…お前ら仲良さげに見えたショ。だから付き合ってるのかと…それか…好き…とかなのかな…ってな…」
なんだか切なさげな表情を浮かべている巻島さんを見て、何故だか心が締め付けられた。
『付き合ってませんよ。それに純太のことは好きですけど、そういう意味じゃなくて…友達としては好きですけど、恋愛感情とか一切ないです。』
なんだか純太に失礼な気もしなくもないが、これが私の正直な気持ちだ。
その正直な気持ちを素直にぶつけると、巻島さんは急に大きなため息をつき下を向く。
『あの?巻島さん?』
私が声をかけると、ホッとした顔つきでこちらをむき、椅子の端に寄り、照れ臭そうに空いたスペースを掌でトントンと叩く。
(ここに座っていいってことかな…?)
私は赤くなる顔を伏せながら失礼しますと声をかけ腰を下ろした。
なんだかとても照れ臭い。
ずっと俯いていると、不意に巻島さんの声がすぐ近くから降ってきた。
「ほら、見てみるショ」
『え?…うわぁ、綺麗。』
「ここの夕焼けは最高なんショ」
巻島さんが見せてくれたのはあたり一帯がオレンジ色に染まるような綺麗な夕焼け。
ふと夕陽を見つめている巻島さんに視線を移す。
その横顔はとても綺麗で思わず見惚れてしまった。