第75章 最後の時間
「フロ、先入って来ていいショ」
その声はどこか柔らかくいつもより距離が近く感じた。
(あ、でも先に入っちゃっていいものなのかな…)
心臓がチクリと痛むぐらい緊張して思わず声が震える。
『あ、えっと、先にいただいちゃっていいの、かな?』
頰が熱を帯びているのが自分でもわかる。
その瞬間裕介さんの口元が少しだけ緩む。
「…一緒に、入るか?」
心臓が跳ねる。
赤くなる顔を隠すように慌てて浴室へと足を向けた。
「冗談ショ」
ふっと吐かれたその一言で少しだけ肩の力が抜ける。
でも、胸の奥に甘いざわめきが残ったまま、湯気の向こうに消えていった。