第58章 インターハイ1日目
小野田くんを送り出してから私たちはまた車に乗り込んだ。
私は両手を胸の前で組み祈るように目を瞑る。
最近、尽八と電話をしているときの裕介さんはいつになく楽しそうだった。
その話題はいつでもインターハイのこと。
尽八が調子を聞き裕介さんがそれに答える。
しつこいぐらいに電話をかけてくる尽八。
そしていつもは無視する裕介さんが笑顔で電話に出る。
2人がこの勝負をどれだけ楽しみにしているのかがわかる。
そんな2人のやり取りを見ていることが好きだった。
「茉璃?」
隣に座っている純太は心配そうにこちらを見つめた。
そんな純太に私は必死に笑顔を作る。
「大丈夫か?」
『う、うん。大丈夫』
「本当か?」
純太のその言葉に私はポロリポロリと力なく言葉を紡ぐ。
『裕介さんね、尽八と…箱根学園の3番の人との約束があるの。2人の決着がつく大事な勝負。今まで戦う約束なんてしてこなかった2人が初めて約束をした勝負。2人はもう3年…これが、このインターハイが2人が勝負できる最後のレースになる…だから、私はっ…!』
純太は今にも泣き出しそうな私の頭に優しく手をおくとまっすぐ前を見つめた。
「大丈夫だ。小野田が必ず追いつくさ。」
純太のその横顔は小野田くんを信じて疑わない、力強い目をしている。
そして青八木くんも私の方をぐっと握ると、一度こっちを見てすぐに視線を前へと向けた。
私は溢れそうになる涙をぐっと堪えただじっと前だけを見つめるのだった。