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蝶と蜘蛛

第5章 再会そして(巻島目線)


彼女を待っていると、なぜか俺の方を見つめ彼女はぼーっとしていた。
何かと思い聞いてみると思いもよらない言葉が返って来た。

『巻島さんがとても綺麗に見えたので…』

そんなこと言われるのは、初めてだ。
よるのは怖いとでも言われると思っていたから、少しあっけにとられていると、彼女はまたあわえたように話を変える。

『私、1年の富永 茉璃と言います。昨日はありがとうございました。とても助かりました。もしよろしければ、何かお礼をさせてはいただけませんか?』

お礼。そんなこと考えたこともなかった。
いざとなると何も思いつかない。
俺にとってはこの状況すらあり得ないと思っていたことなのだから。

「別にあれぐらいのこと…気にしなくていいショ」

そう彼女に伝えると、不意にポケットで携帯が震えた。
とりあえず、誰からの着信かをディスプレイを見て無視でいいと判断する。

気にしていた彼女に気にしなくていいと伝え、着信音も止んだため話を戻そうとすると、また携帯が震えだす。
無視をしていてもしつこく何度もかかってくることに少しイラつきつつ、彼女に一言謝り電話に出ることにした。

「しつこいッショ!!!」
<あ、もしもし巻ちゃん?どうしてなかなか出てくれなかったのだ?もう授業は終わっている時間であろう?>
「…お前がしつこいからショ。」
<しつこいとは酷いではないか!巻ちゃん!>

電話の相手は箱根学園のクライマー、東堂尽八からのものだ。

「んで、なんの用ショ」
<あぁ、そうだった。巻ちゃん、俺たちの記念すべき10戦目となる来月の大会はしっかり申し込んだな?>
「お前は何個記念を作れば気がすむんだよ。…まぁ、ちゃんと申し込んでるショ。」
<申し込んでいるのならよかった。記念は大事だぞ!俺はすべての記念日を覚えている!お前と初めて出会った記念日に(ブチッ
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