第5章 再会そして(巻島目線)
彼女を助けた翌日。
部室の中で練習の準備をしていると外がなんだか少し騒がしいことに気がついた。
インターハイが終わり先輩たちが引退した今、部室前で騒いでいる人物で思い当たる人間など一人しかいない。
その人物、田所迅が後輩であろう手嶋たちと話しているのに少し聞き耳を立てていると、富永さんが部室の外にいることがわかった。
なぜ彼女がそこにいるのかは皆目見当もつかないが、ふと聞こえてきた田所の言葉に嫌な予感がした。
その予感は的中しているようで、田所は俺の発言を嬉々として話そうとしている。
(そんなことさせるわけないッショ!!)
「余計なこと言うんじゃないッショ!!!田所っち!!!」
そう言いながら部室のドアを開け田所の口を塞ぐ。
手嶋や彼女は驚いていたようだが、田所は俺が部室の中にいたことに気がついていたようで、さほど驚いたそぶりは見せなかった。
田所の発言を必死に止めていると、俺らの姿を見て彼女がクスッと笑う。
『あ、いえ!その…仲がよろしいんだなと思って』
彼女は自分が笑ってしまっていたことに気がついていないのか、驚いた表情を見せた後、少し強引に話を変えた。
『その、私、昨日はちゃんとお礼を言えなかったので、お礼を言いたくて純太…手嶋くんに連れて来てもらったんです。』
昨日のお礼とはきっと助けた時の事だろう。
彼女が俺を訪ねて来てくれたんだということが嬉しくて顔がにやけてしまいそうになる。
と、同時に横で田所が俺の方を見てニヤついているのが目についた。
俺はいたたまれなくなり、早く部活の準備をするように田所たちに促す。
そして部室の前じゃ、金城もきっとすぐにくるだろうと思いそばの木の下に移動した。