第9章 悪夢からの目覚め(R-18)
声を掛けるが目を覚まさない
いつもならドアが開いた時点で起きるのに
毛布から出ている肩に手を置いて軽く揺すっても目を覚まさなかった
もう一度声を掛けようとした時、ミズナの手の側に小瓶が転がっているのに気付く
その瓶を拾い上げると張られているラベルを見た
「……睡眠薬?何でこんな……」
瓶の中身は半分以上無くなっていた
一体何錠飲んだのだろう
ラディッツはベッドの側の小型冷蔵庫からペットボトルを取り出した
蓋を開けて片手に持ち、もう一方の腕でミズナの身体を起こす
口を開かせるとゆっくりと水を飲ませた
「……ゴホッ、ゴホッ……ケホッ……!」
気管に入ったのか、咽てから目を開ける
2、3度瞬きをした後、こちらを見て驚いた様に目を見開いた
「……ら、ラディ?……いつ入って来たの?」
「ついさっきだよ。……コレ、何だ?」
そう言いながらペットボトルと一緒に持っていた小瓶を見せる
するとミズナは慌ててそれを取ろうと腕を伸ばした
その手首を掴んで自分の方へと引き寄せる
だが、彼女は顔を背けてこちらを見ようとはしなかった
「……ミズナ」
濡れている目尻を指で拭い、視線を合わせる様にしてこちらを向かせる
手首を掴まれて俯いたままのミズナ
ラディッツは床に膝を付くと両手で彼女の手を包む様に握った
すると、ミズナがゆっくりと口を開く
「嫌な夢ばかり見て眠れないから……処方して貰っただけ」
「何錠飲んだ?」
「……2錠」
「普通の量か。良かった」
そう言い、安心して笑みを浮かべた
どんな夢を見るのかを聞こうとした時、手の甲に雫が落ちる
すぐにミズナの涙だと気付いて彼女の頬に触れた
「どうした?」
「ラディの手……温かい」
「何でそれで泣くんだよ」
「だって……あの時の手、冷たかったから……」
「あの時?」
少し考えてから、雪と氷の星で自分が瀕死になった時の事を思い出した
思えばあの頃からミズナの様子がおかしくなっている
笑顔を見せてもどこか元気がなく、不安そうな表情を見せることが多かった