第8章 失いたくない人
ミズナが横になったままジャケットを脱ぐ
それを手伝うとアンダースーツの上から布を巻いて強く縛った
「つっ……!」
小さく声を上げ、彼女の綺麗な顔が苦痛に歪む
腕と足の止血も済ませると再びミズナの頬に触れた
「目、破片が入ってるだろうな」
「多分……目はこのままで……良いよ」
「……何で前に出たんだよ」
「この星……文明が進んでるから……あの銃も威力あると思って……」
「前に出るよりも奴等を吹き飛ばしたら良かっただろうが」
「あ……そっか……」
「馬鹿」
「ふふ……本当に馬鹿……だね……」
そこまで言うと軽く咳き込み、痛そうに身を縮める
咳を和らげようと背をさするとミズナが礼を言った
礼を言うのはこっちの方なのに
それを言おうとすると、先に彼女が口を開いた
「ポッドの中で……何を聞きたかったの……?」
「ポッド?」
「何か……言いかけたでしょ……?」
「ああ……あれか。今はいい」
「気になるから……」
「……」
「……」
「……お前はベジータといた方が良いんじゃないかって言いたかったんだよ」
「何で?」
「エリートには……エリートだろ」
「……確かに、ベジータさんはエリートだけど……彼とは一緒に……ならないよ」
「何でだよ」
「……ラディが、好きだから……」
「……」
「ラディは……私の事、嫌いになった……?」
「……そんな事、ある訳ないだろ」
そう言うとミズナが微笑む
とても嬉しそうな、幸せそうな表情だった
「もう喋るな。傷に響くぞ」
「うん……そうする」
目を伏せるミズナにソファの端に置いてあった毛布を掛ける
側のイスに座り、スカウターを弄った
星が大きい分、それだけ住んでいる者も多い
北の方角に人々が集まろうと動いているのが分かった
この数を見ると先程の戦闘で減ったのがほんの僅かに思える
銃器が発達しているこの惑星の制圧はそう簡単にはいかないだろう
だが、傷を負ったミズナを戦闘に出したくなかった
これだけの数を自分1人で相手出来るだろうか
そう考えながら笑みを浮かべた