第8章 失いたくない人
「何?何か言いたそうな顔してるけど」
「い、いや……別に」
「嘘」
「……お前はどうして俺の事を軽々と見抜くんだ?」
「子供の頃からずーっと一緒だったから。なんとなく分かる」
「そうか……お前さ、このままで良いのか?」
「え?何が?」
「お前はエリートで、俺は……」
この事で考えているよりは聞いたほうが良い
そう思って言葉を続けようとした時、スカウターに沢山の生命反応が表示された
その全てがこちらへと近づいてきている
「……この悪天候の中、ぞろぞろと」
「星の人達は慣れてるんじゃない?……出た方が良いね」
「そうだな」
ラディッツがハッチの開閉ボタンを押した
隙間から冷たい風と雪が吹き込んでくる
それに逆らう様にしてミズナが飛び出した
自分もその後を追って外に出る
先程よりも視界が良くなっているが、自由に動ける程ではなかった
スカウターの表示を頼りにして相手の方へと向かう
途中でミズナの姿が雪の向こうに消えた
少しして轟音と共に炎が舞い上がる
「もう始めたのかよ。相変わらず凄え攻撃だな」
そう呟き、前方へ手をかざす
光弾を放つとスカウターの表示が減った
別の方向からもこちらに近づいて来る生命体が映し出される
ここはミズナに任せよう
そう思い、反応が近付いてくる方角へと飛んだ
地上付近は地吹雪のせいで相手の姿すら見えない
上空から手当たり次第に攻撃を打ち込む事しか出来なかった
その状態で1時間ほど時間が過ぎる
一度ミズナと合流しようか
そう思って体の向きを変えた時、左足に重みを感じた
「っ!」
見下ろすと何重にも鎖が巻かれている
気付けば吹雪が弱まって地上が見えていた
「……頑丈な鎖だな……普通の鉄じゃない」
引き千切ろうとしていると敵がこちらに銃を向ける
これだけ頑丈な鎖を作る種族
あの銃も普通の物では無いだろう
そう思い、両腕を交差させてガードしようとした
動くのと同時に打ち出される緑色の光線
レーザーだと分かり、思わず目を伏せる
体に突き刺さるような鈍い音が立て続けに聞こえた