第8章 失いたくない人
確かにそう思う
下級戦士の自分よりも、エリートであるベジータの方が相応しい
サイヤ人の血を絶やさない為には強い血統を残すのが良いだろう
『ラディ?どうかした?』
「いや……何でもない」
『そ?なら良いんだけど……』
ミズナにありのままに伝えたらどうなるだろうか
そんな事を考えていると、前方に白い星が見えた
ポッドはその星へと直進している
スカウターに表示される数値を見てラディッツはため息を吐いた
「こんな大きな星、行った事がない……」
『本当、大きいね。着くまで時間あるのにあんなにはっきり見えるし…侵略するのに時間掛かりそう』
「そうだな」
『ちょっと休んでた方が良いかな……着くまでちょっとだけ寝るね』
「ああ」
惑星に着くまであと2時間と50分程
確かに起きているには時間が長過ぎた
だが、先程見た夢が気になって眠れそうに無い
「……親父……俺はどうしたら良いんだろうな…」
ラディッツは小さく呟き、深いため息を吐いた
強い風と吹きつける雪
ポッドを出ると、周囲は真っ白で何も見えなかった
手を伸ばすと手首から先が見えなくなる
それ程吹雪がひどく、身動きが出来なかった
ブリザードの真ん中に着陸してしまったのだろうか
「ラディ~、どこ~?」
声を掛けるが、風の音でかき消されてしまう
スカウターを弄り、表示されたラディッツの生命反応を見てそちらへと近づいた
ぶつからない様に両手を前に出して歩いて行くと、右手首を掴まれる
「っ……ら、ラディ?」
「ミズナ、この中で動けるか?」
「たぶん無理……今もラディの手しか見えないもん」
「だろうな。少し待ってみるか」
「うん」
そのまま手を引かれて彼のポッドへと入る
座先に座ると、自分を膝に乗せてくれた
「うう、寒い!」
そう言いながら、背後から抱きしめる様に腕を回してくる
腕に触れると手袋越しにでも体が冷えているのが分かった
「ラディは露出が多いからね。見てるだけでも寒いよ」
「こんな星に来るって分かってたら別のを着て来たぞ」
「だよねえ。暑い方が嫌だけど、ここまで寒いのも困るね」
「ああ」
とにかくこの風が弱まらなければ動けない
会話が途切れると冷たい風の音が聞こえた
ミズナは自分に背を預けて外を見ている
窓に映る彼女を見ていると、小さく笑ってこちらを見た