第1章 友人以上恋人未満
「見ての通り、サイヤ人だよ」
「痛えな」
「コレくらいで痛がらないでよ。あ、そうだ……」
ミズナがフォークを置き、ごそごそと横で動いた
「?……」
腰に触れられるのを感じて視線を向ける
こちらの尾を解く彼女に何をしているのかと声を掛けようとして眩暈を感じた
「……あ?」
全身から力が抜け、顔がスープの皿に入りそうになる
両手でなんとかふんばりながらミズナの方を見た
すると、彼女が困った様な顔をしているのが目に入る
「な……何を……」
「まだ尻尾鍛えてないの?」
「む、無理言うな……アレは時間が掛かる……」
「まあ、そうだね。食事中にごめんね」
そう言い、ミズナが握っていた尻尾を離した
途端に力が入るようになり、身体を起こす
「スープで顔を洗うところだったぞ」
「ごめん、ごめん。早く食べちゃおう、ね?」
「早く食って……何するんだよ」
「え~と……ラディッツの部屋に行く」
その言葉に聞き耳を立てていた周りの者が驚いたようにこちらを見た
ガラスに映る彼らの姿を見ながら、溜息交じりに返事をする
「片付けるから、少し待ってろよ」
「うん」
嬉しそうに返事をするミズナ
周囲が溜息をつくのが感じ取れたが、彼女はまたしてもそれに気付く様子は無かった
ドアを入れば真正面は横に長い窓
その前に置かれているベッドにミズナは寝転がった
「はあ……お腹一杯。幸せ~」
「アレだけでか?」
「沢山食べたよ」
ミズナが枕を抱き寄せ、窓の方に身体を向ける
髪が綺麗な流れを作って広がった
自分がベッドの端に腰を下ろしてもこちらを気にする様子はない
いつもならブックパネルを貸せだの、飲み物を出せだのと言い出すのに
「……ミズナ?」
遠慮がちに声を掛けるが返事は帰ってこなかった
ミズナは口喧嘩をしても自分を無視するような性格ではない
食べ過ぎて具合でも悪くしたのかと思い、ベッドに手を付いて顔を見た
目を伏せて、安らかな寝息を立てるのを見て脱力する