第1章 友人以上恋人未満
先に歩き出した彼女を追い、緩いカーブの廊下を歩き出す
斜め前を歩くミズナは戦闘服を身に着けていない
シャワーの直後だからなのだろうが、そのせいで体のラインが良く分かった
上着は腰からスカート状になっていてその下から覗く足は細い
その体系で容姿も整っているせいか、船の中では絶えず噂にされていた
彼女に惹かれている自分にとっては聞きたくない話
それでも女性が彼女だけだという状況では仕方がないだろう
そう思いながらC地区から出て階段を下りた
すぐ側にある食堂へと入ると、彼女がトレイを手に取る
食べたい物を好きなだけ選べる食堂
サイヤ人は元来大食いだが、ミズナはあまり食べなかった
人目を気にしているのではなく少量で満腹になるらしい
ミズナは4種類程の皿を乗せるとラディッツの方を見た
そのトレイに乗っている皿の数を見ると小さく笑う
「……何だ?」
「別に。先に席に行ってるね」
「ああ」
特に座る場所が決まっているわけではないが、皆が何となく同じ場所に座っていた
窓に面した横に長いテーブルが自分達がいつも座る席
彼女はいつものようにトレイをテーブルに置くとイスに座った
正面に綺麗な緑色を見つけると、じっとそれを見つめる
ラディッツはそれを尻目に飲み物を取りに奥のほうへ向かった
すると、背後の席で戦闘員が声を潜めて何かを話し始める
小声で聞き取ることは出来ないが、話の内容は想像がついた
誰が先に彼女に声を掛けるのかと言い合っているのだろう
ラディッツは水のグラスを取ると席で自分を待つ彼女に近付いた
自分が彼女の左隣に座ると、周囲が溜息に似た声を漏らす
こちらを見るミズナは全くそれに気付いていなかった
「お前は…………いや、何でもない」
「え?」
「何でもないって。気付いてなきゃ良いんだよ」
「そ?じゃ、いただきまーす」
ミズナはそう言うとフォークを手に取った
サラダを突付きながらその視線がこちらへと向けられる
「相変わらず大食漢だね」
「お前が少ないんだ。サイヤ人ならコレくらい食うだろ」
「そんなに食べれないよ」
「……本当にサイヤ人か?」
そう呟き、一呼吸置いたところで後頭部を軽く叩かれた
何だと見てみれば横にミズナの尻尾が揺れている