第7章 千年に一人
「何だこの床、滑るな~」
水面から顔を上げてそう言うとナッパが顔を拭った
どうやら転んだらしい
それを見て、ラディッツが呆れたように声を掛ける
「変な事をしようとするから……っ!?ミズナ!」
自分の声にベジータが顔を上げた
倒れた衝立の先にミズナが立っている
当然だが、驚いた顔をしてこちらを見ていた
次の瞬間、我に返ったのか腕で胸と下腹部を隠す
「な、ななな……何っ……!?」
「ナッパが覗こうとして……お、俺は止めようとしたんだが……」
「おお~!見れたっ!」
慌てるラディッツと嬉しそうなナッパ
その背後にはじっとこちらを見るベジータの姿が見えた
「……」
「いや~、予想通りのプロポーションだなあ」
「……」
「こんなに堂々と見れるとは思わなかったぜ」
「……ほ……誇り高きサイヤ人が……」
ミズナの言葉と同時に水が細かく振動する
何事かとベジータが立ち上がり、周囲を見回した
水だけではなく、肌にもビリビリと静電気の様なものが走る
発生源は紛れも無くミズナだった
「覗きなんて低レベルの事を!」
ミズナの身体が光り、目を開けられないほどの眩しさが周囲を覆う
それと同時に思い通りに動けなくなるくらいの威圧感が広がった
「くっ!」
眩しさを遮るようにしてラディッツが腕を上げる
その影から金色の髪を逆立てたミズナの姿が見えた
片手を上げ、その上に赤い球体を作り出す
それを思い切り叩き付ける様に振り下ろすと、床が大きく揺れた
立っていられなくなり、湯船の底に膝を付く
揺れが収まるのと同時に消えていく光と威圧感
ようやく身動きが出来る様になるとラディッツは腕を下ろした
「今のは……おい、ミズナ」
ラディッツが立ち上がって声を掛ける
だが、そこにはミズナの姿は無かった
「ミズナ?」
「もお、皆で見る事無いじゃない。ラディ、衝立戻しといてねー」
「ああ……」
湯船から上がったのか、洗い場の方から声が返って来る
いつものミズナの声にほっとして倒れた衝立を起こした
自分の隣に居たナッパはどこに行ったのだろう
周囲を見回すと、浴槽の外に倒れているのを見つけた
ベジータは気にする様子もなく浴槽を出ようとしている