第7章 千年に一人
ベジータはそう言うと跳ね返って戻って来た石鹸を手に取り、鏡の前に置いた
1つ席を空けた隣ではラディッツが髪を束ねて身体を泡だらけにしている
その妙な髪形に見入っていると、ふいに彼がこちらを見た
「何だ?」
「いや……髪が長過ぎるのも困るな」
「ああ。だが、切るのには躊躇する」
生まれ時から不気味な程変わらない髪型
それがサイヤ人の特徴だった
多少鬱陶しくても切った時に失敗するよりはマシなのだろう
ベジータは泡をシャワーで流すと浴槽へと入った
同じ様にラディッツとナッパが入って来る
壁際の段に腰を下ろし、腕を組んだ
大きな窓から見える外の景色を眺める
離れた場所に座ったラディッツがそれを見ながら口を開いた
「シャワー装置からは見えない景色だな」
「ああ。……こんな事に船の面積を使うとはな」
もっと他の場所を広く取れば快適に過ごせるだろうに
そう思い、ベジータは小さく溜息を吐いた
水滴が天井から落ちる
一度上がろうかと思った時、ラディッツが慌てた様子で立ち上がった
何事かと彼が進む方向へ視線を向ける
すると、またしてもナッパがミズナの方を覗こうとしていた
「や、やめろって!」
「止めるな。今日を逃せば次は無いんだ」
「おい、ベジータ!何とかしてくれ」
「ふん……見たい気持ちは分かる。俺はミズナの体を見た事があるが、ジャケットを着ている時とは違って……」
そこで言葉を切り、口の端を上げて見せる
2人の動きが一瞬止まったが、ラディッツにはそれが何のことなのかはすぐに分かった
ベジータとミズナの体が入れ替えられた時だろう
(って事はミズナもベジータの身体を見たんだよな……)
そう考えた時、隙が出来たラディッツの腕を解いてナッパが衝立の方へと行ってしまった
「お、おい!」
何としてでも止めようと慌ててその後を追う
ベジータは諦めたのか、手を貸してくれそうになかった
力ではナッパに敵わない
どうやって止めようかと思っていると、目の前の彼の姿が消えた
それと同時に正面の衝立が倒れる
バシャンッという音が浴室に響いて反響した