第7章 千年に一人
「ところで……何か用だったのか?」
「ううん。顔見たかったの」
「え?」
「って言ったらどうする?」
「あのな……」
「ふふっ」
小さく笑い、視線を前方へと向ける
すれ違う者が皆繋いでいる手を見ていた
そんな事には全く気付かずにミズナが話を続ける
「体、何とも無い?」
「体?」
「子供から戻ってから……だるいとか、頭痛いとか」
「ああ……あの事か。何とも無い」
「そ。良かった」
安心した様にミズナが微笑む
彼女らしい、とても可愛い笑顔
この笑顔が自分にだけ向けられていたら良いのに
そう思いながらミズナの横顔を見つめた
「ん?」
「い、いや……その……」
何と言えばいいのだろう
素直に言えば殴られるだろうか
言葉を選んでいると、突然ゴォンと低い音を立てて明かりが消えた
「きゃっ……な、何?」
ミズナが慌てた様子で腕に抱き付いてくる
それに驚きながらラディッツは周囲を見回した
5秒ほどで非常用の電源がついたが、その数は少ない
近くに寄らなければ相手の表情も見えないくらいだった
「停電、か?最近故障が多いな」
「この前、派手にあちこち壊した人がいるみたいだしね」
「そうなのか。命知らずな奴だな。フリーザ様が怒らなかったのか?」
「……」
「ミズナ?」
「あ、えーっと、怒ってはなかったよ。困ってはいたけど」
「そうか」
ラディッツ自身がやったと言ったらかなりのショックを受けるだろう
ミズナはそう思いながら周囲を見回した
「非常用の電源って……部屋のドアには通ってなかったよね」
「確かな。手動でも開けられるが……」
スカウターを弄り、暗視モードにして部屋のドアを見る
自分の部屋はまだ先だった
ミズナを腕に付けたまま部屋の前まで進んでドアの前で膝を付く
床から数センチ上の部分を爪で引っ掛けて開けた
中の装置を弄っていると、ミズナが珍しいものを見る様にして覗き込む
「これが手動で開けるやつ?初めて見た」
「普段は使わないからな」
操作を終え、元通りにハッチを閉めた
それを見てミズナがドアを開ける
室内は窓から入る星の光で廊下よりも明るい
安心したのか、ミズナが腕を放してベッドに腰を下ろした