第4章 入れ替わり
キスをし、殴られたあの翌日から自分をそう呼ぶようになったミズナ
彼女以外で自分をラディと呼ぶ人が居ないのを思い出してミズナのほうを見た
「じゃぁ、ミズナの中身がべジータなのか」
「そうだ。この星の奴等は特異な能力を持っているとは聞いていたが……」
ベジータがそう言いながらミズナの方を見た
両手で顔を押さえているのを見てそちらへと近付く
「俺らしく振舞え!そんな女々しい格好をするな!」
「そ、そんな……無茶言わないで下さいよ」
外見はベジータでも中身はミズナ
普段見て知っている彼の行動でも、そのまま真似するのは簡単なことではなかった
言い寄るミズナとたじろぐベジータ
中身は逆だとは分かっているもののやはり奇妙だった
「おい、今は言い合ってる場合じゃないだろ。とりあえず……どうするんだ?」
「ふん……母船に戻るしかないだろう」
「そのままで、か?」
「この星の奴等が俺達を戻せるとしても、1人残らず殺したんだ。ここに居ても仕方がないだろう」
「まあ……そうだな」
「自然に戻ったりするんでしょうか……?」
「神にでも祈っているんだな」
「はあ……」
肩を落として悲しそうな顔をするベジータ
ミズナはその姿を見て何か言いたげに口を開きかけたが、諦めたように自分のポッドの方へと歩いて行った
戻れるまではこの星に居たほうが良い気がする
だが、フリーザは早くこの星を買い手に譲りたいと言っていた
いつ2人が戻れるか分からないのに帰還を遅れさせるわけにはいかないだろう
ラディッツはそう思い、ポッドのハッチを開けた
宇宙を自在に航行するフリーザの母船
発着室から無言で出て行くサイヤ人を整備士が首を傾げて見送った
足早にC地区へと続くムービングウォークを歩くと、ミズナの部屋へと入る
いつもならフリーザに任務報告に行くが、今日はそちらには向かわなかった
このままの状態でフリーザの前に行く訳にはいかない
惑星侵略完了の知らせは帰ってくる途中に無線で知らせておいたから平気だろう
ミズナがベッドに腰を下ろし、膝に肘を付く
その手に顎を乗せる座り方はベジータの癖だった