第4章 入れ替わり
侵略先の住人が死ぬ間際に放った光線
それはまっすぐと自分の方へ向かっていた
目では見えているものの、避ける前に周囲が光に包まれる
咄嗟に身構えたものの身体に痛みは感じなかった
「?……」
攻撃ではなかったのかと思い、顔の前にかざしていた手を下ろす
白い空間を見回そうとした次の瞬間、身体を強く引っ張られた
「何……っ!」
自分を引っ張る者の姿は見えない
だが、確かにもの凄い力で引っ張られていた
誰かの気配に視線を上げると見慣れた顔が見えた
驚いたような顔をして自分を見ている
「ベジータさん……っ!」
止まろうにも身体が思うように動かない
ぶつかると思った瞬間、ミズナは強く目を閉じた
「……、おい、ミズナ!ミズナ!」
聞きなれた男性の声に重い瞼をゆっくりと開ける
ぐらぐらと頭が揺れるような気持ち悪さを感じながら周囲を見回した
少し離れたところでラディッツがミズナの肩を掴んで揺すっている
それを見ながら何かおかしいと感じた
ラディッツの前に居るのはミズナ
では、ここでその様子を見ている自分は誰だろう
そう思いながら自分の両手を見るように視線を落とした
「……!」
見えたのは自分の物ではない、筋肉が付いた腕
震える両手で顔に触れるとゆっくりとミズナの方を見た
彼女も困惑したような表情でもこちを見ている
「ベジータ。お前は大丈夫か?」
ラディッツがこちらにそう声をかけた
それを聞き流すようにしてベジータとミズナが間合いを詰めて互いの顔を見る
「どうかしたのか?」
その言葉に同時にラディッツの方を見た
ラディッツが2人の顔を交互に見て首を傾げる
「ラディ、私は……誰?」
「誰って……ベジータだろ。なんだよ、いきなり私なんて……」
「では、俺は誰だ」
「……ミズナ。俺はないだろ、俺は」
「クソッ!」
ラディッツの返答にミズナが側にあった岩を殴った
砕け散る破片を避けるようにしてベジータが2、3歩後ろに下がる
「おい、どうしたんだよ」
「俺がベジータだ!さっきの奴に入れ替えられたらしいな」
「入れ替えられたって……そういや、さっきべジータが俺をラディって呼んだな……」