第2章 距離
「お邪魔しまーす」
ミズナはそう声を掛けるとラディッツに背を向けて腰を下ろした
ハッチを閉めて彼の代わりに母船への帰還コードをパネルに打ち込む
離陸のカウントダウンが始まり、0になると多少の揺れと共にポッドが地上を離れた
星の重力で彼の胸に体が押し付けられる
それが妙に恥ずかしく感じて身動ぎをした
「何か……くっつき過ぎて変な感じ」
「……そうだな」
「……」
「ミズナ?」
声を掛けるが返事がない
顔を見ようとした時、ミズナの手が顔面を押さえた
「な、何だよ」
「今すっごい変な顔してるから見ちゃ駄目」
「変な顔?」
「そ。あ~、もう。何でこんな事に……」
そう言い、溜息を吐くミズナ
それはベジータのせいだと言葉に出そうになったのを飲み込んだ
居づらそうにモゾモゾと動くたびに彼女の髪が頬をくすぐる
視線を落とすと、ミズナの頬が赤くなっているのが見えた
その途端に自分の方まで赤くなったのを感じる
「あー……母船まで3日か。寝るしかないな」
「そ、そうだね。寝よう」
ミズナはそう言うと身体を丸めるようにして目を伏せた
それを見てラディッツが溜息を吐く
「寝づらいだろ、ミズナ」
「え?あ、ちょっと……」
背後から身体を引かれてラディッツに寄り掛かるような格好になった
すぐ側に彼の顔があり、その呼吸まで分かるようになる
「……」
今までにこんなに距離を縮めた事はなく、ミズナはどうしたものかと視線を彷徨わせた
すると横を見たところで視線が間近に合わさる
「……」
「……」
ラディッツの目に映る自分はどんな顔をしているだろう
変な顔だと困ると思い、ミズナは慌てて顔を背けると視線を落とした
「へ、変な顔だから見ちゃ駄目って……」
「……どこがだ?可愛いぞ」
「あのね……上官に対して言う言葉じゃないでしょ」
「俺はいつもこうだろ」
「……そうだったっけ?」
思い返すミズナを前に抱えながら、窓から見える前方のポッドを見る
ベジータが言った言葉は本当なのだろうか
彼が他人に関心を示すのは初めてだと思う
(相手がベジータでも……ミズナは渡したくねえな)
ラディッツはそう思いながらミズナの肩に顔を埋めた